御礼
まずは、頭の中が真っ白になりながら書いた訃報の日記に対して、みなさまからの暖かい言葉をたくさんいただけたこと、感謝申し上げます。
コメントだけではなく、直接メールをくださったり、夫宛にメールや電話で私のことを気づかってくださったり、多くの方に支えていただけたと感じております。みなさんの言葉一つ一つがとても心に沁みました。ありがとうございました。

しばらくブログはお休みしようと思っていたのですが、皆さんの言葉に感謝の気持ちをまずはお伝えしたくなり、こうして書き始めました。書き始めると、父とのことをあれやこれやと思い出し、これからとりとめもなくいろいろなことを書いてしまいそうです。酔っ払いの戯言…寂しん坊の独り言…。今夜は少しだけ…語らせてください。



父のこと
父は半年程前から入院しており、大変な治療を繰り返しておりました。つい半月程前には歩くリハビリを始めたと聞き、多少ほっとしていたのですが…。先週の火曜日に容態が急変したという連絡が入った時にはすでに帰らぬ人となっておりました。

北海道という遠い地での出来事だったので、最後に立ち合うことが出来なかったどころか、事後報告の電話を受けたという状態でした…。午前中から具合が悪く母は看護婦さんに何度も訴えたらしいのですが…先生には伝わらなかったのだそうです…。せめて伝わっていれば、私も駆けつけることが出来たかもしれない…。だけど…今更「たられば」に思いを巡らせても父は戻らないから、もうこれは考えることをやめよう…。

生前父は私に「親が死のうが、最後まで自分に与えられた仕事を投げ出さずにやり通せる人になりなさい。」とよく話していました。
役者さんが訃報を聞いても舞台を果たしている姿はとても立派だとも言っておりました。
ゆえに、私も間に合わないとわかった時には、自分の仕事を放りださず、その日のうちに出来る限りのことを夜中までかかって片づけ、翌日北海道に向かうことにしました。

会えなかったことはとても悔しいし、辛いし、残念なことでした…。だって「ありがとう」って言えなかったのだから…。北海道から上京して、こちらに永住を決めた時から、ある程度は覚悟していたことなんですけれどね…。

父は無宗教ということで、普通のお葬式は生前の希望により執り行いませんでした。「音楽葬」にして欲しいという希望があったというので、お寺にも行かず自宅で父の好きだったCDの全集を片っ端からお線香をきらさないのと同じようにかけていきました。

時にはポール・モーリア、時にはブラザーズ・フォー、時にはマンボ…。
父はいわゆるイージーリスニングと呼ばれているものが好きでした。

実家に帰り、裏庭に行ってみました。
猫の額ほどの小さな畑です。
父が一生懸命手入れをしていた畑です。

今年実ったミニトマトが
誰に収穫されるでもなく
土に帰るように落ちていました。
母が少し拾って、食べました。
私も食べました。
季節はずれのトマトは
少しすっぱく…
それでも父が育てたトマトは
夏の匂いを運んでくれました。







葱の花もそのまま枯れていました。
枯れているのに、
まるで世話をしてくれた人を
待っているかのように
凛とした姿で
立っていました。











冬になると
一生懸命雪かきをしていた父の姿を、
壁にたてかけられた
黄色の雪かきから
思い出さずにはいられませんでした。








芽吹いているつぼみも見つけました。
一昨日あたりから、北海道は
雪が降ったそうです。
雪の中でこれから咲くのでしょうか…?

なんのつぼみなのか、
母も誰もわかりませんでした。



「お棺の中にお父様の好きだった何かを入れてあげてはいかがですか?」

納棺師さんからのご提案に、父が好きだったワインレッドのポロシャツを探したけれど、遠い昔のことだったので、見つかりませんでした。けれど、昔「カンカン帽」をよく被っていたことを思い出し、帽子を探すことにしました。

私が覚えていたその帽子は見つかりませんでしたが、父は結構オシャレだったんだな…ということがわかりました。帽子をたくさん持っていたんです。

農業を営んでいたわけではないのですが、裏庭の畑のために麦わら帽子を2つ持っていました。しかも頭のところ、しっかり型押ししています。2つとも別仕様でした。

雪かき用の毛糸の帽子もなんだかちょっと今風な感じ。これも色違いで2つありました。

麦わら帽子と毛糸の帽子。父がよく身につけていた物だから、かさばったけれど、2つもらってきました。季節に応じて壁にかけ、オブジェにするつもりです。
父の柩にはよく被っていた野球帽のような白い帽子を入れることにしました。


父は日本酒が大好きでした。
けれど、糖尿病を患うこととなり、ウィスキーや焼酎に転換。
「焼酎はウマいと思って飲んだことがないんだ」と笑いながら、それでも毎日晩酌していたっけ。
小さな紙パックならお酒も入れて良いですよと言われ、入れました。

私も父の血を受け継ぎ「飲ん兵衛」と言われているけれど(苦笑)。

夫が静かに寝息をたてています。
そばにいて支えてくれた夫にもありがとうと伝えたい…。

私はこれからグラスに何を注ごうか…。

琥珀色に包まれた幼い頃の思い出を一つずつ思い起こしていくうちに、少しずつその思い出に色がつき始めてきました。
幼い頃の父との会話をあれやこれやと思い出しています。

父は川をしっかり渡れているのかな…。
初七日は川まで辿り着く日程だと聞いたことがあります。
もう川を渡り始めていることでしょう。

………


ここまで付き合って読んでくださった方、ありがとうございます。(深謝)

*次回からは、今まで通りの「うさうさの月記帳」に戻る予定です。